2014年11月10日月曜日

鑑定事例2 二輪車と四輪車接触事故 2/2


二輪車も含めて自動車同士の衝突ではピンポン球の運動とは異なり、衝突した車両は簡単にはじき返されるものではない。
    衝突した速度に対してはじき返される速度の割合を反発係数という。
   よく弾むピンポン玉などは反発係数が1に近いが、自動車の場合衝突により鉄板などが変形する事によりエネルギーが吸収されるため通常0.2以下である。

   二輪車が右へ旋回しながら側面の四輪車と衝突した場合、反動で車体が若干起こされる程度の事は考えられるが、当初の調書見取図の様に入射角と反射角が同等になることはあり得ず、図2-2.に示す様に衝突した四輪車とほぼ同方向へ進行する事が予想される。

3)予想される衝突形態
    前項でも述べた様に車両同士の衝突の場合反発が少ないため、本件の様に浅い角度で四輪車と二輪車が接触した場合、接触後二輪車は四輪車とほぼ平行方向へ進行する事となる。
   本件ではA車は進路左へ方向転換して左車線のC車へ向かっている事から、図3.に示す様に、左へ車線変更したB車により押し出されたと考えられる。
   またA車は回避する間もなくC車と衝突している事からB車との衝突地点は調書に記載されている地点よりもC車に近い地点であった可能性が高いと考えられる。
(4)まとめ
   調書見取り図による衝突形態ではA車は右手前方を走行するB車へ向けて自ら急旋回をして衝突させた事となっており、前方に何か障害物が現れたなどの特殊な事情でもなければあり得ない事は一見して明らかである。
   今回鑑定により、物理的、工学的にもあり得ない事が出来たと考える。


鑑定事例2 二輪車と四輪車接触事故 1/2


本件では片側3車線道路を直進していた二輪車(A)と右側車線を進行していた四輪車(B)が接触、進路を乱した二輪車(A)が左端の車線に停止していた四輪車(C)に追突、Aの運転者が重傷を負ったもの。
   Aは頭部を強打したため、事故当時の記憶がなく、現場検証ではBの主張により下記の見取り図が出来ていたというものです。
右前方を走行する四輪車の後部へ向けて二輪車が右へ急旋回を行ない、左方向へ跳ね返されるという一見してあり得ない状況となっています。
    本件では路面の痕跡、落下物等の記録は一切ありませんが、幸いにして両車両側の損傷、傷の状態の写真が調書に詳細に記録されていたため、鑑定が可能でした。


(1)双方の傷の状況
  ~1. B車両
   車体左側面後輪の付近に数条の擦過痕が発生、擦過痕長さは最大で0.9m、また最も高い位置にある傷の地上高は1.03mである。
   傷の方向は路面とほぼ平行である。
  車体後面のバンパー、テールゲートなどには傷は存在しない。


 ~2. A車両
   B車と接触した車体右側にはバックミラー、サイドカウル、前フェンダー、マフラーなどに擦過痕が発生。
   最も高い位置にあるバックミラーの地上高は1.03mである。

(2)傷の状況から予想される接触時の状態
  両車の傷の位置から図1.に示す様に二輪のA車はほぼ直進走行状態でB車と接触したものである。

A車が右へ旋回中に接触した場合は、図1-1.で示した様に両車の傷の高さが異なってくる。
   また図2-1.の様に接触直後に二輪車側が進行方向を変化させた場合、二輪車の傾き角が大きく変化するため、図1-2.に示す様に四輪車側の傷に傾きが生ずるはずである。
   本件のB車の傷は、傷の位置及びその方向から、二輪車がほぼ直進中に発生したものと断定出来る。

続く