二輪車も含めて自動車同士の衝突ではピンポン球の運動とは異なり、衝突した車両は簡単にはじき返されるものではない。
衝突した速度に対してはじき返される速度の割合を反発係数という。
よく弾むピンポン玉などは反発係数が1に近いが、自動車の場合衝突により鉄板などが変形する事によりエネルギーが吸収されるため通常0.2以下である。
二輪車が右へ旋回しながら側面の四輪車と衝突した場合、反動で車体が若干起こされる程度の事は考えられるが、当初の調書見取図の様に入射角と反射角が同等になることはあり得ず、図2-2.に示す様に衝突した四輪車とほぼ同方向へ進行する事が予想される。
3)予想される衝突形態
前項でも述べた様に車両同士の衝突の場合反発が少ないため、本件の様に浅い角度で四輪車と二輪車が接触した場合、接触後二輪車は四輪車とほぼ平行方向へ進行する事となる。
本件ではA車は進路左へ方向転換して左車線のC車へ向かっている事から、図3.に示す様に、左へ車線変更したB車により押し出されたと考えられる。
またA車は回避する間もなくC車と衝突している事からB車との衝突地点は調書に記載されている地点よりもC車に近い地点であった可能性が高いと考えられる。
(4)まとめ
調書見取り図による衝突形態ではA車は右手前方を走行するB車へ向けて自ら急旋回をして衝突させた事となっており、前方に何か障害物が現れたなどの特殊な事情でもなければあり得ない事は一見して明らかである。
今回鑑定により、物理的、工学的にもあり得ない事が出来たと考える。